
新たな100年の始まり、再創業元年を迎えての決意
株主のみなさまには、平素より格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
KOMORIは2023年に創業100周年を迎えました。30年ごとに当社の売上高と事業展開を俯瞰すれば、現在は事業変革・再創業期にあると捉えています。経営者として、100年続く企業を率いることは、決して容易ではなく、過去の慣例や成功体験が新しい経営の障害になることもあります。しかし、VUCAの時代(社会変化が激しく予測が困難な時代)においては、厳しい競争と変化の中に多くの可能性が潜んでいます。時代の変化を見極めて、その可能性に挑戦していくために、新たな気概を持ってリーダーシップを発揮したいと考えております。
第7次中期経営計画のポイント
第7次中期経営計画が2025年3月期から始まりました。この計画ではKOMORIグループの現状を冷静に判断し、ROE6%以上および、営業利益率7%以上を目標に設定しています。
ここで特に重要な課題は、成長事業の拡大を目指した事業ポートフォリオ改革と、多様性の促進を重視した人的資本経営です。株主や投資家の視点を取り入れながら、資本効率を高めた経営を進めることが必要です。
さらに、事業変革を確実に進めることを前提に、2030年度までにROE10%以上を目指す長期目標も掲げました。また、M&Aを含む成長投資を強化するため、総還元性向を従来の80%から50%に変更し、最低配当額を40円としました。第7次中計の中心課題は、「事業変革の達成」です。事業変革(=事業ポートフォリオ変革)なしには、KOMORIグループの健全な発展はありえないと確信しています。
資本効率を改善して、株主・投資家の皆さまの期待に応える
KOMORIでは資本効率と資本コストを意識した経営を、持続的な成長と企業価値の向上のための重要な課題と位置づけています。株主・投資家の皆さまからはPBR改善の要請を受けており、コーポレートガバナンスコードに基づいて、積極的に取り組む必要があります。これに応じて、「長期ビジョンの策定」、「第7次中期経営計画」では、資本効率の向上を目指して「製品・サービスの競争力強化」「成長投資や人的資本投資の実行」「サステナビリティへの対応」「事業ポートフォリオの改革」「戦略投資の実行」などの施策を進めています。また、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の方針を開示し、コーポレートガバナンスにも反映させています。
第7次中計ではROE目標を6%に設定しましたが、これは資本市場の期待に達していないと私は考えています。現状、7~8%程度の株主資本コストを考慮すると、これは最低ラインであり、2030年度にはROEで10%以上を目指していきます。この目標を達成するために、事業ポートフォリオ改革(=成長事業の拡大)と人的資本経営(=多様性の浸透)が最も重要な課題だと考えています。また、成長事業への戦略投資を200億円に増やすため、総還元性向は第6次中計の80%以上から第7次中計では50%に変更しました。戦略投資に重点を置きながらも、財務の健全性と安定性は維持する方針です。
成長事業の拡大は、DPS事業において、2024年6月のdrupa展示会で発表した「J-throne 29」が世界最高レベルのデジタル印刷機械として高く評価されました。この成果は、社内の技術開発と多くの外部企業との共創によるものです。高速デジタル印刷機械の性能には、デジタル印刷技術だけでなく、紙搬送技術が大きく影響します。KOMORIは、この紙搬送技術を他社機械にも提供しつつ、インキなどのリカーリング事業やサービス事業の拡大を進め、DPS製品のラインアップを拡充することで事業全体の収益向上を図ります。
人的資本経営においては、グローバル人財の積極的な活用が重要な課題となっています。さらに、グローバル人財の登用により、日本の保守的な判断基準に新しい考え方を取り入れて、業務革新を推進していきます。そして「KOMORIの経営状況と課題、目指す未来」を従業員と共有し、組織コミュニケーション強化して、経営スピードを上げる「自走型組織の構築」が何より重要と考えています。
こうした事業革新、経営体質の改善、そして戦略的な投資を通じて、私は資本効率の高い経営を着実に実現し、株主や投資家の皆様の期待に応えたいと考えています。
今後とも、KOMORIグループへのご支援をよろしくお願い申し上げます。
2025年5月