有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)事業環境に関するリスク

①オフセット印刷市場が縮小するリスク

当社グループは、これまで出版、商業印刷向けオフセット印刷機を主軸に事業を展開しきましたが、印刷業界はインターネットや電子書籍の浸透によって、特に欧米・日本では書籍、商業印刷の需要が縮小しており、商業印刷向けオフセット印刷機の売上高が減少してきております。今後、インターネットの普及による電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透することによって書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット印刷事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、厚紙(加飾、医薬、中間箱)、段ボール、ラベル、軟包装等といったパッケージ市場は持続的に成長していることから、パッケージ印刷はこれからも成長が見込まれます。当社グループは、今後、オフセット印刷事業の主力分野を商業印刷からパッケージ印刷市場への対応を強化し、製品戦略としてROIを軸とした製品ポジショニングの見直しによる競争力向上と生産体制の再構築を行い、差別化商品の市場投入、ブランド認知度の向上、ソリューション提案による領域の拡大等の施策を行ってまいります。

②欧米の海外現地法人の収益力が弱体化するリスク

現地法人では、インターネット等の普及による電子媒体の増加に伴い、販売主力機である商業印刷向けオフセット印刷機の需要が減少傾向にあり、収益力が弱体化する可能性があります。
そのため、オフセット印刷機の入れ替え需要の獲得、部品販売や保守サービスの推進、さらに資材及び機材販売の強化に乗り出しております。また、商業印刷向けオフセット印刷機の需要は漸次減少しつつも、一定の入れ替え需要は存在しております。
しかしながら、印刷会社においてコスト競争力の強化が必須になっており、印刷工程の省力化、スキルフリー化が求められております。その対策として、当社グループが開発したKP-ConnectやDPSを活用し、印刷会社のリカーリングインカムの増大を構築すべく工程最適化ソリューションの提案による商機拡大を図ってまいります。

③電子部品等供給リスク

電子部品等の供給不足が引き起こす生産ラインの不安定稼働とそれに伴う納期遅延は、供給のひっ迫と需要の拡大などの複数の要因(米国と中国の経済摩擦・新型コロナウィルス感染症の拡大と収束・サプライチェーンの混乱と輸送コストの急騰・新規需要の拡大など)が複雑に絡み合った結果と捉えております。この状況が解消されずに継続した場合、当社グループの財政状態及び経営成績が悪影響を受ける可能性があります。
このような状況への対策として、電子部品や一般市販部品メーカーとの連携強化を図り、先々の使用量を提示してロット発注や適正な在庫確保に努めてまいります。また電子部品や一般市販部品の代替可能な部品を選定し、同種部品の2社以上の調達先確保を前提に、発注先メーカーの新規開拓の促進を図ってまいります。

④製品の品質クレームにより損害が生じるリスク

当社グループが製造・販売する製品に販売、生産、サービスに起因する製品の品質クレームが発生した場合は、補修等の損失や損害賠償による損害が発生し、さらには信用問題とともにブランドが毀損する可能性があります。
そのため、当社グループは、「顧客視点」の総合的な品質管理として知覚品質管理を実施しております。この知覚品質管理は、「ブランド管理」を軸にし、「総合製品品質管理」、「顧客対応品質管理」、「見栄え品質管理」を行っており、顧客視点での品質保証体制を整備しております。また、グローバルCRMを活用したサービスケースの迅速な対応を体制強化してまいります。

⑤情報セキュリティの侵害に係るリスク

情報セキュリティが侵害され、情報漏洩、データの破壊や改ざん、業務やサービスの停止等の被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるのみならず、当社グループへの信用失墜に繋がる可能性があります。
そのため当社グループは、情報セキュリティの推進に係るポリシーを「情報セキュリティ基準」や具体的な利用・運用ルールの要領として定めるとともに、推進組織としてITセキュリティ委員会を設置し、国内外グループ会社を含めセキュリティ体制の構築、維持、整備を行っております。また、定期的な脆弱性診断やリスクアセスメントを実施する事により、リスクを早期に発見し、対策を講じる体制を構築しております。
今後も脅威動向の変化を捉え、サイバーセキュリティ対策への取り組みを継続してまいります。

(2)新規事業に関するリスク

①デジタル印刷事業の拡大が停滞するリスク

印刷業界では、高性能・高生産なデジタル印刷機に対する需要は根強く、当社グループとしては引き続きプロユースのデジタル印刷機の商品化に取り組んでまいります。
コニカミノルタ社と共同開発の上で製品展開を行っておりますB2サイズのデジタル印刷機「Impremia IS29」については、初期の技術課題に関して一定の改善が図られ製品の完成度が向上しています。また、B2サイズのデジタル機については市場に登場してから約10年が経過していることより、競合他社より次世代機の開発計画が示され更には同市場への新規参入を表明するメーカーもあることから当社グループも次の製品に向けた製品改良、新規開発の必要性に基づく開発投資が発生する可能性があります。
またB1サイズの次世代デジタル印刷機「Impremia NS40」については高い品質基準が求められており、さらなる性能向上について中期的な取り組みに着手しております。

(3)財務に関するリスク

①為替レート変動によるリスク

当社グループの主要な海外市場は、欧州、北米、中国を含むアジアであり、海外売上高比率は全体の60%超となっております。円以外の主要な取引通貨はドル、ユーロであり、為替変動の影響を受けやすい構造となっており、想定為替レートに対し急激な円高が発生した場合は売上高、利益の減少等収益に影響を与えます。
為替レート変動によるリスクを軽減するため、当社グループは原材料や部品の海外調達や、一部製品の海外生産を実施しております。また、円建て契約を優先するほか、先物為替予約等でヘッジすることにより短期のリスクの合理的な軽減を図っております。
しかしながら、大幅な変動が生じた場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

②のれんの減損が顕在化するリスク

当社グループは、主に印刷需要が伸びている新興国市場でのシェア拡大を目的とした企業買収を行っております。この企業買収に伴い、のれんを計上しておりますが、買収後の事業が計画に対して実績が下回るなどにより、その乖離が継続して生じた場合は、のれんの減損損失の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業買収に当たりましては、企業価値算定、投下資金の回収見込み、買収金額の妥当性、リスク等について取締役会で十分な審議を行った上で意思決定を行っております。また買収後は出向者の派遣並びに連携の強化などを通じて、管理及び事業の推進体制を整え、リスクの軽減に努めております。

③棚卸資産の過多によりキャッシュ・フローが悪化するリスク

当社グループが販売予測の前提条件と実績の乖離により過剰な製品在庫を生じさせた場合は、生産調整にとどまらずキャッシュ・フローを悪化させる可能性があります。
そのため、過剰な製品在庫を生じさせない対策として、適正在庫の全社目標を設定するとともに、関係会社毎に売上水準に合わせた在庫目標を設定し、月次で乖離を管理しております。一方で昨今の電子部品等の供給リスクに対しては、中長期的な販売予測を元に部品毎に適正在庫量を設定することで、棚卸資産の管理と安定供給生産の両立を目指してまいります。

(4)災害等によるリスク

①製造拠点の集中に係るリスク

当社グループの主要製造拠点であるつくばプラント及び製造子会社において、地震や竜巻等自然災害が発生した場合には、製造設備の破損、サプライチェーンの機能麻痺等が発生し、操業停止等の事態に陥り、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンについては、東日本地域のサプライヤーだけでなく、西日本や海外のサプライヤーとの取引拡大などの対策を講じています。今後は、適正な部品在庫を確保するために発注方法の見直しを検討・計画し対策を講じていく予定です。
直下型地震対策については「事業継続計画(BCP)」の策定、「首都圏直下型地震発生時リスクマネジメント」(地震対策マニュアル)の社員への配布、防災訓練(コロナ禍の中においては、リモート防災訓練)などの対策を講じています。

②新型コロナウィルス感染の拡大により事業活動が停滞するリスク

当社グループは、当社及び国内外子会社で構成され、印刷機械の製造販売を主な事業内容とし、また印刷に関連する資材・機材の供給を行っております。生産体制は一部の製品を除き一括して日本で行っておりますが、販売体制は、海外の現地法人を展開し、グローバルな体制を敷いております。そのため、国内を含め、全世界的に深刻な影響を及ぼしている今回の新型コロナウィルス感染症の大流行(パンデミック)により、当社グループの財政状態及び経営成績が悪影響を受ける可能性があります。
そのため、刻々と変化する状況や錯綜する情報を集約しつつ、事態の進行状況に応じて、下記のような対策を国内外のグループ会社も含め、迅速に実行しております。

  • 海外赴任者対応、海外渡航の制限・基準の設定と現地医療体制、感染状況に応じた指示の徹底
  • 海外渡航者に対する、ワクチンパスポート取得の推奨
  • 国内外の搬入前立会及び現地搬入のリモート化推進
  • 製造拠点間への訪問は許可制とし必要最小限に抑制
  • 海外渡航者、全従業員とその家族、お客様、協力企業を対象に職域接種を迅速かつ計画的に実施
  • PCR、抗原検査キットを備蓄し感染懸念のある従業員に対する自主検査の実施
  • 業務停滞に係る影響分析(顧客に対する影響や自社収益に係る影響)
  • 状況に応じた販売、生産、サービス活動の調整
  • 代替調達先の確保等サプライチェーン対策
  • リモートワーク、時差出勤業務の特定と迅速な実施
  • リモートワークによる業務標準化の推進と、それに伴う資源供給とサポート強化
  • 従業員の労務・健康管理、会社示達「全従業員に対する行動基準の徹底」等の迅速な情報伝達 など

また、収束期に入った段階においても、想定し得るリスクをとらえ、その軽減を図りながら企業活動への悪影響を最小限にとどめる方法を検討し実施してまいります。