経営成績および財務分析(2026年3月期)

経営成績

当連結会計年度における世界経済は、比較的堅調に推移しました。年度初めには、米国の輸入関税政策をめぐり金融市場の混乱が見られましたが、年度末には概ね落ち着きを取り戻しました。一方で、ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学リスクは継続し、不安定な市場環境が続きました。

印刷機械の市場動向は、地域ごとに濃淡が見られたものの、省エネ性能の向上や生産性向上、効率化を目的とした合理化投資への関心は各地域で継続しており、特に高付加価値印刷やパッケージ分野での設備需要は堅調に推移しました。

このような市場環境のもと、当社グループでは、菊半裁寸延オフセット枚葉印刷機「LITHRONE GX29 advance」を新たにラインアップに加え、カードや医薬品パッケージ等の多様化・高度化する印刷ニーズに対応し、同分野における付加価値を強化しました。この他に、オペレーティングシステムの強化や、「KP-Connect」による工程間データ連携を通じて、高速生産と損紙低減を両立し、印刷工場全体のスマートファクトリー化を推進しています。また、国内サービス体制の強化を目的として、2025年10月1日にコンタクトセンターを開設し、24時間受付体制の整備を通じて、業務効率化と顧客満足度のさらなる向上を目指しております。
以上の結果、当連結会計年度における受注高は114,534百万円(前連結会計年度比12.5%減少)となり、売上高は118,611百万円(前連結会計年度比6.8%増加)となりました。売上原価率は、前連結会計年度に比べ良化しました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、売上高の増加に伴う販売出荷費が増加したこと、研究開発費が増加したこと等により増加しました。その結果、営業利益は、9,404百万円(前連結会計年度比32.2%増加)となりました。経常利益は、円安による為替差益の増加等により10,718百万円(前連結会計年度比40.8%増加)、税金等調整前当期純利益は10,814百万円(前連結会計年度比18.1%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,371百万円(前連結会計年度比1.7%増加)となりました。

また、海外売上高は85,485百万円(前連結会計年度比10.8%増加)で、売上高に占める割合は72.1%となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

a. 日本

セグメントの「日本」には、日本の国内売上高と、日本から海外の代理店地域や海外証券印刷機の直接売上高が計上されております。同代理店地域には、一部のアジアと中南米等が含まれております。上記記載のそれぞれの地域での業績を反映した結果、セグメントの「日本」の売上高は87,044百万円(前連結会計年度比5.2%増加)となり、セグメント利益は9,637百万円(前連結会計年度比37.0%増加)となりました。

b. 北米

セグメントの「北米」には、米国の販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました北米の状況の結果、セグメントの「北米」の売上高は12,740百万円(前連結会計年度比37.1%増加)となり、セグメント利益は625百万円(前連結会計年度は8百万円)となりました。

c. 欧州

セグメントの「欧州」には、欧州の販売子会社、欧州の紙器印刷機械製造販売子会社グループ及び印刷後加工機製造販売子会社グループの売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました欧州の状況の結果、セグメントの「欧州」の売上高は28,476百万円(前連結会計年度比13.0%増加)となり、紙器印刷機械製造販売子会社の受注増対応による人的資本の投資等により、セグメント損失は1,919百万円(前連結会計年度は778百万円)となりました。

d. 中華圏

セグメントの「中華圏」には、香港、中国深圳市、台湾の販売子会社及び中国南通市の印刷機械装置製造販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました中華圏の状況の結果、セグメントの「中華圏」の売上高は13,601百万円(前連結会計年度比14.9%減少)となり、セグメント利益は133百万円(前連結会計年度比48.6%減少)となりました。

e. その他

「その他」には、インド、シンガポール及びマレーシアの販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べましたその他地域の状況の結果、売上高は7,133百万円(前連結会計年度比21.1%増加)となり、セグメント利益は492百万円(前連結会計年度比19.8%増加)となりました。

財政状態

(資産)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,212百万円増加し、178,158百万円(前連結会計年度比3.0%増加)となりました。資産の主な増加要因は、投資有価証券の増加4,078百万円、棚卸資産の増加2,149百万円、現金及び預金の増加1,946百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加1,578百万円等であります。主な減少要因は、有価証券の減少6,987百万円等であります。

(負債及び純資産)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,185百万円減少し、55,261百万円(前連結会計年度比3.8%減少)となりました。負債の主な減少要因は、1年内償還予定の社債の減少10,000百万円、電子記録債務の減少5,082百万円等であります。主な増加要因は、社債の増加9,000百万円、流動負債その他の増加1,498百万円、繰延税金負債の増加1,401百万円、契約負債の増加716百万円等であります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,397百万円増加し、122,896百万円(前連結会計年度比6.4%増加)となりました。純資産の主な増加要因は、利益剰余金の増加2,933百万円、その他有価証券評価差額金の増加2,844百万円、為替換算調整勘定の増加1,286百万円等であります。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の66.8%から69.0%(前連結会計年度比2.2ポイント増加)となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の2,176.79円から2,316.06円(前連結会計年度比139.27円増加)となりました。

キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ4,549百万円減少し、52,851百万円(前連結会計年度比7.9%減少)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が17,018百万円の資金増加であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ13,485百万円増加幅が減少し、3,533百万円の資金増加となりました。資金増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益10,814百万円、減価償却費2,277百万円等であり、資金減少の主な内訳は、仕入債務の減少額5,740百万円、法人税等の支払額3,294百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が4,781百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ1,873百万円減少幅が縮小し、2,908百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出3,837百万円、定期預金の預入による支出2,088百万円等であり、資金増加の主な内訳は、定期預金の払戻による収入2,122百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が4,310百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ1,762百万円減少し、6,072百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、社債の償還支出10,000百万円、配当金の支払額4,433百万円、リース債務の返済による支出409百万円等であります。

研究開発活動

研究開発は当社グループの事業戦略において重要度の高い活動です。
当社グループは事業戦略上重要な活動として次の研究開発に取り組んでいます。

  1. オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発
  2. 紙幣印刷機の関連技術開発
  3. 高い生産性を有するデジタル印刷機の開発
  4. 革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発
  5. 環境対応の要素技術開発

当連結会計年度における当社グループの重要な研究開発成果は次のとおりであります。

1.オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発

Guangzhou Xunyue Software Co., Ltd.(迅越小秘書科技集団、中国:広州市、以下、ションエツ社)と、KP-Connectのアライアンス連携に合意しました。中国の印刷業界においても、人手不足への対策として、省力化や自動化への期待が高まっています。KOMORIとションエツ社は、製造実行システム「KP-Connect Pro」(KOMORI)とMISソフト「迅越MIS」(ションエツ社)を連携することにより、中国製造業に合った新たなモデルを構築し、① ジョブ指示の双方向通信、➁ 設備の運転状況のリアルタイム可視化、③ ハードウェアに依存しない高精度なデータ取得、という3つの成果を達成しました。このモデルを基準として、今後の印刷業界のスマート化を強力に推進していきます。
A全判オフセット枚葉印刷機「LITHRONE G37 advance」 (以下、GL37)を、ラインアップに追加しました。GL37は、アドバンスシリーズの特長である、安定した給排紙性能に基づく高速印刷性能を備え、メイクレディ時間の短縮、損紙の低減を推し進めることによって世界最高クラスのROIを実現します。そして、刷新されたオペレーションスタンドで、オペレーターをより強力にサポートして高い作業効率を実現するとともに、環境技術で実現した電力削減や損紙低減により、温室効果ガス(GHG)の排出量を削減します。最大印刷寸法は、620mm × 930mm。A4の8面付けがカラーバーと同時に印刷できます。

2.紙幣印刷機の関連技術開発

当社グループは、高セキュリティ印刷分野における技術力の高度化及びグローバル展開の加速に向け、複数の重要案件を獲得しています。米国においては、紙幣印刷を担うBureau of Engraving and Printing(BEP)より銀行券印刷設備を受注し、厳格な入札評価を経て当社技術の信頼性・競争力が高く評価されました。また、マレーシアのNexG Berhad向けにオフセット印刷機「LITHRONE SX29」2台を受注し、高セキュリティ印刷分野における技術展開を進めています。本設備は、最先端の自動化及び品質検査技術により国際水準の高精度印刷を実現するとともに、省エネルギー設計により環境負荷低減にも寄与します。さらに、高度なセキュリティ機能を維持しつつ生産性向上と納期短縮を両立し、次世代材料やセキュリティ技術にも対応可能な拡張性を備えています。これらの取組みにより、当社グループは高セキュリティ印刷分野における技術的優位性を強化するとともに、各国における品質・環境・セキュリティの高度な要求に応える基盤を確立しています。

3.高い生産性を有するデジタル印刷機の開発

次世代デジタル印刷機「J-throne 29(ジェイスロン29)」の市場展開を通じ、デジタル印刷技術の実用化及び事業基盤の拡大を推進しました。北米においては、米国の大手印刷会社1Vision社への初納入を決定し、「J-throne 29」の導入により短納期対応、運用効率向上、柔軟な生産体制の実現に寄与する見込みです。これは、当社デジタル印刷技術の北米市場への本格展開に向けた重要な成果です。また、欧州においては、フランスのImprimerie Edgar社と欧州初号機の導入契約を締結しました。本契約は業界イベントにおける実機評価を契機とし、高品質・高生産性・環境性能等の技術優位性が高く評価されたものです。「J-throne 29」は、オフセット印刷に匹敵する生産性とデジタルの柔軟性を両立し、商業印刷等の多様な用途に対応可能であり、印刷プロセスの高度化に貢献します。これらの取組みにより、当社グループはデジタル印刷分野における技術革新とグローバル展開を加速するとともに、顧客の競争力強化に資するソリューション提供を一層推進してまいります。

4.革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発

PE事業における薄膜塗工技術の開発及び事業体制の強化を進め、着実な成果を創出しました。PE要素技術開発センター(PEDEC)において試験ラインを拡充し、大面積かつ均一な超薄膜形成技術の高度化に向けたプロセス検証を実施しました。その結果、スリットダイコーターとNIR(近赤外線乾燥)+熱風乾燥を組み合わせたテスト環境を確立するとともに、従来必要であったレーザースクライブ工程を不要とする透明電極の新たな印刷パターニング技術の有効性を確認しました。今後は、当社独自のロールコーターとNIR技術の融合により、膜厚均一性のさらなる向上及び生産プロセスの高速化を図ります。引き続きPEDECの体制を活用し、幅広い分野での開発を推進してまいります。

5.環境対応の要素技術開発

製品使用時におけるCO2排出量を、2022年度基準に対して2030年度に30%削減させるという第7次中期経営計画目標のもと、昨期完成させた消費電力削減技術をオフセット枚葉印刷機アドバンスシリーズへ順次搭載させていく開発を進めています。

設備投資等の概要

当連結会計年度の設備投資総額は4,900百万円であり、セグメントごとの設備投資について示すと、次のとおりであります。

(1) 日本

当連結会計年度の主な設備投資は、建物及び構築物、機械装置、工具、器具及び備品、土地の取得を中心とする総額2,640百万円となっております。
なお、重要な設備の除却及び売却はありません。

(2) 北米

当連結会計年度の主な設備投資は、工具、器具及び備品、ソフトウェアの取得を中心とする総額764百万円となっております。
なお、重要な設備の除却及び売却はありません。

(3) 欧州

当連結会計年度の主な設備投資は、建物及び構築物、機械装置、工具、器具及び備品の取得を中心とする総額1,433百万円となっております。
なお、重要な設備の除却及び売却はありません。

(4) 中華圏

当連結会計年度の主な設備投資は、機械装置、工具、器具及び備品の取得を中心とする総額55百万円となっております。
なお、重要な設備の除却及び売却はありません。

(5) その他

当連結会計年度の主な設備投資は、機械装置、工具、器具及び備品の取得を中心とする総額6百万円となっております。
なお、重要な設備の除却及び売却はありません。

今後の見通し

当社は、長期的展望に立ち、証券印刷機事業で政府関連機関に超長期に渡るサービスを提供すること等のため、財務・経営基盤への信頼と将来の事業拡大を目的に内部留保の確保を念頭に置きながら、株主の皆様に対し安定かつ充実した利益還元を継続的に行うことを最重要課題の一つと認識しております。当期の期末配当金につきましては、一株当たり普通配当35円とさせていただくべく、第80回定時株主総会に付議することを取締役会にて決議いたしました。
次期の配当につきましては、業績の予想に基づき1株当たり中間配当金35円、期末配当金40円、年間75円配当とさせていただくことを予定しております。

当社グループの事業環境につきましては、依然として不確実性が高く、地政学リスクや経済の変動に対して都度、迅速な判断、軌道修正が必要となります。印刷業界においては、出版印刷分野や商業印刷分野での印刷物は減少が予測されるものの、高付加価値印刷やパッケージ印刷の需要は堅調に推移することが予測されております。特にアジア地域においてはパッケージ印刷を中心に需要が高まっており、好調に推移することが予測されます。一方で、材料費や物流費の高騰、労働力不足、気候変動対策に伴う温室効果ガス排出量削減等の課題が依然として存在しており、これらの課題に対する迅速な取組みが求められています。ワンパス両面機、多色機、検査装置等の高付加価値機能による生産性向上の取組みや、消費電力低減等の環境性能向上の取組みがより一層求められております。

このような事業環境の中、2027年3月期は第7次中期経営計画の最終年であり、その基本骨子であるサステナブルな経営体質に向けた事業変革と経営基盤強化を推進してまいります。オフセット印刷機事業においては、今後もさらなる高付加価値印刷実現に向けた両面コーター、疑似エンボス等の要素技術、そして環境対応に優れた印刷機の市場投入を進めてまいります。また、「KP-Connect」を中核としたスマートファクトリー構想の具現化を進めており、生産現場の「見える化」「自動化」「整流化」を実現し、生産性の最大化、環境、人財不足への対応に取り組んでまいります。一方、DPS事業については、B2サイズではクラス最速となる、片面印刷毎時6,000枚の印刷速度を実現するB2枚葉UVインクジェットデジタル印刷機「J-throne 29」を市場投入し、デジタル印刷の常識を覆す圧倒的なスピードとパフォーマンスで、世界最高クラスのROIを実現します。また、証券印刷機事業については、今まで培ってきた銀行券印刷のセキュリティ印刷技術をさらに強化するとともに、国・企業・個人のアイデンティティーを守る新しいソリューションの提供を目指してまいります。PE(プリンテッドエレクトロニクス)事業は、迅速に技術開発を進めるためにパートナー企業との共同開発や産学連携によるオープンイノベーションを推進し、新たなアプリケーション開発を進めてまいります。

環境への取組みとしましては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく気候変動に関するリスク・機会の分析、グループ全体のCO2排出量の削減、環境配慮型の製品開発等の施策を実行し、持続的な成長につなげてまいります。当社グループでは、持続的な企業価値向上を実現するため、人財を最も重要な経営資本と位置づけ、人的資本経営の強化に取り組んでいます。ダイバーシティの推進、人財マネジメントの強化、働きやすい職場環境の整備を三本柱とする「K-Work(KOMORI流働き方改革)」を通じて、多様な人財が自律的に成長し、能力を最大限発揮できる環境づくりを進めています。あわせて、グローバル人財の育成を最重要課題として位置づけるとともに、エンゲージメントサーベイ等により把握した課題に基づく部門ごとの改善を継続し、さらに健康経営の取組みを強化することで、グループ全体での生産性向上と持続的成長を目指してまいります。

次期の連結業績予想につきましては、世界各域の地政学リスクが長期化するおそれがあること、長期的には米国の関税に伴う世界経済への影響等が想定されますが、不透明な要素が多く、現時点での業績予想には織り込んでおりません。為替レートを1ドル145円、1ユーロ165円を前提として、売上高1,240億円、営業利益95億円、経常利益92億円、親会社株主に帰属する当期純利益を72億円としております。